2017年3月14日火曜日

北朝鮮の携帯型対空ミサイルシステムがIS(イスラミック・ステート)戦闘員の手に渡った


著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)
 
タブカ空軍基地が陥落した後にイスラミック・ステート(以下ISと記載)が公開した画像は、この基地でイグラ-1E(注:西側呼称名はSA-16)携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)が捕獲されたことを明らかにした。
しかし、今ではそのミサイルがイグラ-1Eではないとともに、この写真がタブカではなく現在はISの訓練基地として使用されているイスラーム軍から捕獲したKshesh(注:ジラー空軍基地)で撮影されたことが明らかとなった。  
画像の背景にある退役したMiG-17の列と2機のL-39の存在が基地の識別に寄与したのである。 

当初、このミサイルはイグラ-1Eと識別されたものの、IS戦闘員によって運用されたMANPADSはそれの外観はとまったく一致していなかった。
 「9M39」型イグラ(後の派生型)に見られるような針状のエアロスパイクの存在が、ピラミッド状のノーズコーンを有するソ連が生産した通常のイグラ-1E(9M313)と異なることを示したのである。
また、他の外部の特徴も他のロシアのシステムおよびその外国のコピーである点を否定した。
イグラ-1Eを生産している他の国はほとんどないが、北朝鮮は9K111対戦ミサイルシステム(注:西側呼称名はAT-4)と共にそれらを生産するライセンスを取得し、その後に独自の要求に応じて改修しイグラ-1Eの派生型を独自生産した。 
改修された9K111は「火の鳥-2(注:不死鳥-2とも言われる)」の名称を付与されており、北朝鮮製のイグラ-1Eは「HT-16PGJ」という名称を得たことが判明している。
しかし、北朝鮮で運用されているMANPADSには、しばしば 「火縄銃」という愛称が与えられているので、HT-16PGJという名称は輸出専用である可能性が高い。

シリアは北朝鮮の武器を取得していることが知られているが、MANPADSがシリア政府側に引き渡されたことについては今までまったく記録がなかった。
北朝鮮とシリアの双方は武器移転に関する情報の公開について乗り気ではなく、現在の3年半にわたる長い紛争の中で、多数のMANPADSが敵対する兵士達の手に落ちることが見られても、北朝鮮製の可能性があるものはまだ認識されていなかった(注:2014年当時)。

占領された第17師団、121連隊93旅団の基地から出てくる、イラン製Iラード対戦車ミサイルを含む、他の多数の装備が捕獲されている状況を映した様々な写真やビデオリポートでもそれらのミサイルは見られなかった。

北朝鮮が米国の指定したテロ組織に武器を提供していることはよく知られており、このような移転の最近での例はハマスによって使用されている火の鳥-2の目撃によって確認された。

HT-16PGJが元のデザインとは質の面で異なるかは不明だが、いくつかの外面な違いを言及することができる。
まず第一に、ミサイル自体は特徴的なピラミッド型(注:三脚型)エアロスパイクの代わりに、後の世代のロシア製MANPADSで見られる針状のエアロスパイクを使用しているように見える。
さらに、いくつかの型ではバッテリーとハンドルが改修されており、先端の保護キャップはより現代的なMANPADSを思い出させるものとなっている。
 

ISがHT-16PGJの相当数のストックを有することはありそうにもなく、写真のミサイルが彼らの所有する唯一のものであるという可能性すら除外できない。
したがって、観測されたHT-16PGJは、シリアとイラクの戦場における米国、シリア及びイラクの空軍の日常の作戦に少しも影響も及ぼすことはない。

 ※ この翻訳元の記事は、2014年8月に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。     

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