2017年6月8日木曜日

希少なAFV:スーダンのAFV修理施設内部の光景


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 1956年にイギリスから独立して以来、様々な供給元の影響のために軍隊で使用されている装備の種類に関して言えば、スーダンは間違いなく最も興味を引く国の一つでしょう。

 そもそもスーダンはエジプトとイギリスによって訓練と装備を受けていましたが、それから大量のソ連製装備を受け取り始め、その後に中国の武器援助が続く道を選びました。近年はベラルーシ、ウクライナやロシアなどの国々から多数の兵器を購入しており、今やこれらの国々は中国やイランとともにスーダンに対する武器供給の主要国となっています。

 スーダンは既に挙げられた国に加えて、ドイツ、リビア、チェコスロバキア、フランス、アメリカ、サウジアラビア、東欧諸国、そしてもちろん北朝鮮といった国からも兵器の供給を受けたことがあります。こうした多様なAFV群を運用することはまさに兵站面での悪夢にほかならず、スーダンに存在する先述した国々のうちの幾つかから派遣された専門家がこれらを維持するために支援しているのです。
  
 この状況を改善するために、スーダンはAFV修理工場とエルシャヒード・イブラヒーム・シャムス・エル・ディーン複合体を設立しました(後者は幾つかの種類のAFVの製造にも関わっています)。このAFV修理工場は主力戦車、歩兵戦闘車(IFV)、装甲兵員輸送車(APC)の修理に特化しており、スーダン軍の管轄下にあります。これは、エルシャヒード・イブラヒーム・シャムス・エル・ディーン複合体がMIC(Military Industry Corporation)の一部である点とは反対です。

 このAFV修理工場はハルツーム(首都)の中心に位置しており、そのような施設を設けるにしては間違いなく興味深い場所と言えます。


 様々な荒廃状態にある多数のAFVが散乱している施設の現状を確認してみると、スーダン人の要員がいるだけではなく、いくらかの東欧の人間もソビエト時代のAFVの維持と分解整備を支援しています。

 この記事にある画像のほとんどはそのようなアドバイザーからのものであり、その多くはスーダン滞在中に彼らの作業を撮影したものです。このある人物は以前にはウガンダとイエメンで勤務しており、ここでも同様に人材育成の支援をしていたようです。


 著しく損傷した「T-72AV」はスーダンでは「アル・ズバイル-1(T-55-SH1)」としても知られており、破壊された「2A46」125mm砲の修理を待っているか、あるいは部品取り用として使用されているようです(下の画像)。

 これまでにスーダンは「T-72AV」を世界中の国から入手しており、その大半はアフリカに供給していたウクライナから(同国が最後にストックしていたものを)調達しました。

 スーダンの「T-72AV」購入は、南スーダンもその数年前に大量の「T-72AV」を購入していたために注目に値します。この取引はケニア経由で手配されたものであり、33台の「T-72AV」を積載した南スーダンへ向かう貨物船「ファイナ」が海賊によって乗っ取られたために、国際的な議論の原因となったからです。

 ウクライナのインストラクターが南スーダンの兵士に「T-72AV」を運用させる訓練の担当になった一方で、残りの「T-72AV」をスーダンに売ることは問題にならなかったように思われます。

 スーダンはSPLA-N(スーダン人民解放軍/運動)に対抗するため、同国南部にこれらの戦車をすぐに配備しました。

 この取引は、スーダン軍と南スーダン軍との間で新たな戦闘が発生しそうな出来事の間に、両軍が互いに同一の迷彩が施された「T-72AV」を配備するという特異な状況をもたらしており、それは戦場での混乱や場合によっては誤射に至ることが不可避なことは言うまでもありません。


 今でもなお新品状態にある非常に古いアルヴィス「サラディン」装輪装甲車は、施設のメンテナンスホールの外で再塗装を控えています(下の画像)。この装甲車がいかに旧式であるにしても、いくつかの国は運用し続けており、インドネシアでさえ残存している車両の改修を試みているほどです。

 スーダン軍が「サラディン」を運用し続けるのか、この残存している車輌をゲートガードとして展示するつもりなのかは判然としていません。


 結局、この「サラディン」装甲車は(変わった迷彩塗装を施されたおかげで)本来の無塗装の状態に対する被発見率を多少は低下させることができたようです(下の画像)。

 少なくとも2台の「サラディン」が新しい塗装を施されており、2台目(画像の2段目)は前部に深刻な損傷を受けていますが、再塗装によって悲惨な姿から受ける印象がさらに増してしまいました。


 「フェレット」装輪装甲車はスーダンで運用されてきたもう一つのイギリス製の主要な装備であり、スーダン軍の兵士たちによって運用されていた最初のAFVの一つです(下の画像)。これも再塗装されているものの、砲塔の「M1919」軽機関銃が失われてしまいました。
 前部タイヤの一つに深い亀裂が入っていることから、 再塗装はもはや戦闘での使用を目的にしたものではない可能性があります(注:同一個体ではないものの、ゲートガードで使用されている車両が存在しているため)。

 下の2列の画像の上段には一見して退役したように見える中国製の「62式」軽戦車の列を見ることができますが、そのうちの少数は今でも現役に留まり続けています。



 「BMP-1」歩兵戦闘車は30mm機関砲を搭載した一人用砲塔「2A42 コブラ」への換装の改修を受け、本来ならば同車に搭載されている既存の73mm低圧砲を装備した「2A28 グロム」砲塔を置き換えています(下の画像)。この新型砲塔はベラルーシとスロバキアの共同開発であり、スーダンは運用しているある程度の「BTR-70」もこの砲塔に換装しています。
 画像の車両では、「PKT」7.62mm同軸機銃が欠落しているようです。

 スーダンに僅かしかない「BMP-2」歩兵戦闘車の一台を背景に見ることができます。これも少数のイランが設計した、同車のコピーである「ボラーク」装甲歩兵戦闘車(AICV)と一緒に運用されています。


 背景に「BMP-2」、中国製「WZ-551」装甲兵員輸送車(APC)、「59D式」戦車と2台のイラン製「サフィール74」・「タイプ-72z」・「T-72Z」または「シャブディズ」戦車といった他の車両が寄せ集められている中に、フランス製の「パナールM3」APCが見えます(下の画像)。  
 この「パナールM3」は20mm機関砲が取り外されており、いつか再び運用されることは見込めません。おそらくはフランス製「AML-90」も同じ運命に陥っているでしょう。


 スーダンは非常に多様なBTRの派生型を運用しているおり、その中でも「BTR-70」、ベラルーシによる改修型「BTR-70」、ウクライナによる改修型「BTR-70/80A」と「BTR-3」が含まれています。それに加えてスーダン軍は中国の「WZ-551」と「WZ-523」 APCの大量のストックも有しており、70年代初めに引き渡されたチェコスロバキア製「OT-64A」の残存しているものもあります。

 2番目の画像で、「BTR-80」の砲塔が車体に備え付ける状況を見ることができます。



 MICが「アミール2」偵察車として売り出しているソビエトの「BRDM-2」は、まだ新品同様の状態です(下の画像)。「BRDM-2」自体の設計は60年代前半のものですが、スーダン軍は2000年代にベラルーシから追加の車両を受領し続けていたとみられており、それらは既に同軍で運用されている「BRDM-2」群に加わりました。

 「アミール2」は近ごろUAEで開催された武器展示会「IDEX2017」でも展示されており、MICが国際市場向けに新造した「BRDM-2」を売り出すことを示唆しました。

 MICの分かりにくいマーケティング戦略にもかかわらず、「アミール2」は実際のところ「BRDM-2」の運用を続ける国に向けた同車のアップグレード案です。このアップグレードでは、「BRDM-2」本来の140hpを誇る「GAZ-41」エンジンを210hpのいすゞ製「6HH1」エンジンへの換装が見られ、機動性と燃費の向上を提案しています。

 いくつかのアフリカ諸国が老朽化している「BRDM-2」の運用を続けていますが、これらの国のいずれかが同車のアップグレードに関心を持つということは考えにくいでしょう。


 修理施設のメンテナンスホールに3台の「WZ-551」があります(下の画像)。このAPCは以前にMICによって「シャリーフ2」として売り出されていたものであり、MICが単に同車を輸出製品の一覧に記載していただけで実際に売り出していたのかは不明だが、画像の車両はスーダンでオーバーホールを受けている可能性を示唆しています。

 スーダンに納入された別の中国製AFVである「WZ-523」が今や「シャリーフ2」として売り出されていることが、余計な混乱を招いています。

 しかし、この件についてはMICが「WZ-551」と「WZ-523」の両方をオーバーホールできる可能性を意味しているかもしれません。


 スーダン軍は主にベラルーシ、ウクライナやロシアからストックされている中古AFVを入手していますが、限られた数のウクライナの「BTR-3」に加えてロシアの「BTR-80A」も保有しており、そのうちの一台を下の画像で見ることができます。 また、その背景に一台の「BRDM-2(またはアミール2)」、「BMP-1」と「T-72AV」も見ることができる。

 より興味深いことに、画像には退役したM60の列(注:画像左)が見えますが、そのうちのごく一部は依然としてスーダン軍で運用状態にあると考えられています。


 下の画像で見える教場は、スーダン軍で運用されている様々なロシアのAPCとIFVの武装で満たされています。

 左には「BRDM-2」、「BTR-70」と「BTR-80」用である「PKT」7.62mm同軸機銃付きの「KPV」14.5mm重機関銃2門があり、右には「BTR-80A」と「BMP-2」用の「2A42/2A72」30mm機関砲2門を見ることができます。また、「BTR-80A」の砲手の訓練用に設けられた完全な同IFVの砲塔モジュールが後ろに見えることにも注目するべきでしょう。

 壁に掲げられたロシアの国旗は、スーダンの乗員の訓練におけるロシアの影響を疑う余地は無いことを暗示しています。


 ※  この翻訳元の記事は、2017年5月31日に「Oryx」本国版(英語)に投稿されたもの
   を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる

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