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2017年3月8日水曜日

フォトレポート:シリア・アラブ陸軍(2)

著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)

シリア国防省がついに 21世紀のメディア技術を取り入れたために、今ではHD画像が公式サイトとツイッターアカウントに定期的にアップロードされている。
この「大いなる」躍進にもかかわらず、 シリア国防省が依然として外の世界にアラビア語のみでしか情報を発信しないため、それによって、もしそうでなければシリアの戦場で継続中の戦闘に関する声明を読んだり観たりすることに興味があるだろう、多くの視聴者や読者を遮断している。
それでもなお、公開された画像は、私たちに別の「フォトレポート」のための絶好のチャンスを与えている。

シリア・アラブ防空軍(SyAADF)のパーンツィリ-S1(写真)。
過去10年間に、かなりの量の現代的な地対空ミサイル(SAM) がシリアに届けられたが、内戦中にも引き渡しが続けられている。
S-300PMU-2、ブク-M2、ペチョラ-2Mとパーンツィリ-S1の導入によるSyAADFの完全なリニューアルが、本来は2000年代の間に計画されていたものの、最初の引渡しが延期され、結局はキャンセルされたと考えられている。
2014年からイラクに引き渡されているタイプに似た、より高度なバージョンのパーンツィリ-S1が、最近になってSyAADFにも導入された。









シリア軍のT-72AV TURMS-T (Tank Universal Reconfiguration Modular System T-series)は、FCSを強化するため、2000年代にイタリアのガリレオ・アヴィオニカによって改修された型である(写真)。
興味深いことに、 単にT-72AVやT-72M1をTURMS-T規格に改修するだけではなく、SyAAはこの改修計画にT-72 「ウラル(初期型)」も含めることを決定した。
T-72 「ウラル」とT-72M1は、TURMS-T規格のパノラミックサイトが搭載されたT-72の大部分を占めている。
全てをパノラミックサイト付きのTURMS-Tを装備したT-72へ改修することは高価すぎると見なされていたため、限られた量のT-72しかこの改修を受けることができなかった。
なぜ、あまり進歩していないT-72の派生型がこのパノラミックサイトを装備できたのかは、いまだに謎のままである。



ランチャーから発射された「ボルケーノ(火山)」ロケット(写真)。
これらのロケットは、直撃によって居住区画を完全に破壊できる火力を有することでよく知られるようになり、2013年のアル=クサイルでの戦いで大きな決め手となった。
ボルケーノは標準的なロケット弾と、はるかに大きな弾頭を一組にして、大幅に致死性を高めたものの、射程距離と精度が低下した。
この同じ頃、ボルケーノの量産するペースが上がり、現在では、これらのロケットがシリアの戦場のほぼすべての戦線で使用されている。

シリアでは、ボルケーノが3回の開発サイクルを経て生産されていると考えられており、さらにそれぞれいくつかの派生型に分かれている。
107mmと122mmベースのボルケーノが最も普及したタイプであるが、220mmベースのタイプも存在する。
シリアでは107mmと122mm(グラード)ロケットが極めて一般的なので、これらのロケットをボルケーノへ転換することは比較的簡単な方法で可能であり、220mmロケット弾はシリア国内で生産されていることが知られている。





BMP-1は、依然としてシリア軍における歩兵戦闘車(IFV)の保有リストの大部分を占めているが、最近のロシアによるさらなるBMP-1とBMP-1Pの供与で、近い将来、これが変わる可能性は低いだろう。
BMP-1のパッとしない武装や薄い装甲防護力の問題は、シリア内戦の間に痛いほど明確にされているが、これらの能力を向上させる目的で、政権側が実施した改修はほとんどない。
いくつかの部隊は、コンタークト1爆発反応装甲(ERA)を車体と砲塔に追加することによって、BMP-1の装甲を「補強」しようと試みた。
砲塔の装甲はコンタークト1との適合に十分なほど強力ではあるが、車体の紙のように薄い装甲は(コンタークト1の)爆発に耐えられず、装甲の薄い層を粉砕して内部の人員に大きな怪我を負わせる可能性が高い(注:砲塔はERAの爆発に耐えることができるが、車体は装甲が薄すぎてERAの爆発に耐えることができないということ)。


T-72「ウラル」は、シリア軍で運用されているT-72の中で最も古いタイプである。
かつて、ハーフィズ・アル=アサド前大統領によって「世界最高の戦車」と言われていたが、今日ではその大きな弱点で有名であり、多くの動画で命中後に激しい爆燃(注:誘爆)を被り、その結果として砲塔が壮大に吹き飛ばされる様子が映されている。



シリア内戦では、シリアを支配すべく戦う多くの勢力が使用する、大量のAKタイプのライフルが見ら
れているが、PKタイプの機関銃の拡散は度々見落とされがちであった。
PKとPKMは未だにシリアで汎用機銃の大半を占めているが、過去数年間にいくつかの派生型がシリアの戦場で現れた。
これにはロシアのPKP ペチェネグ北朝鮮の73式が含まれる。
後者はイラン由来のもので、イラン・イラク戦争中に購入したものである。
イランが独自のPK・PKMタイプの機関銃を生産し始めた後、これらはすぐに保管され、最終的にはイラク、シリア、イエメンのシーア派民兵組織の手に渡った。








依然としてきれいな状態の3両のT-72AVが、シリアの荒廃した街中を通り抜けている(写真)。
T-72AVは通常の装甲よりも大幅に改善されているが、装着されているコンタークト1では、より強力なロケット推進擲弾(RPG)と対戦車ミサイル(ATGM)に対しては防護できないことが判明している。
加えて、サイドスカートにおけるERAの支え自身が、命中するRPGの爆発に耐えるにはあまりにも脆弱であることが確認されており、ときには1回の命中でサイドスカート全体の落下を引き起こすことがあった。








非常にまれな光景:コンタークト1ERAをすべて取り除かれたシリアのT-72AV(写真)。
この画像は上記に見られるような、ERAを完全に装着したT-72AVとの素晴らしい比較を可能にさせる。
この戦車は訓練部隊によって運用されている可能性が高く、そのERAは、前線での実戦部隊で使用されるT-72AVのために取り外され、明らかにERAを有効に活用できている。



演習中におけるシリアのコマンドー部隊(写真)。
シリア内戦がまさに6年目に入ろうとしているにもかかわらず、これらの部隊によって行われた特殊作戦については全く知られていない。
その代わり、ほとんどのシリアの「コマンドー」は、 シリア軍とNDF(国防軍:政権側の民兵組織)と一緒に通常の歩兵として用いられていると考えられている。
彼らはコマンドー専用のパッチによって他の部隊と容易に識別することができるが、赤色のベレー帽を着用している姿をめったに見ることはできない。






シリア内戦でのATGMの拡散は、ロシア製T-90、米国製M1エイブラムス、さらにはドイツ製レオパルト2の装甲防御力を試すのに十分な機会をもたらした。
トルコがシリアの戦場にM60Tとレオパルト2A4を配備して北シリアへの介入を強化したことで、シリア内戦は世界で最も新しい、戦車と装甲の改修のための完璧なテストの場と化している。
かつて、M1エイブラムスはほとんど貫通が不可能と考えられていたが、イスラミック・ステートによる9M133コルネットATGMの配備によって撃破される状況が見られた。
同様に、トルコのレオパルト2A4も、シリア北部への短期間の展開中に、主に採用されていた貧弱な戦術のために、ATGMの犠牲になった。
T-90Aの装甲防御力はシリアでの戦闘中にもテストされているが、壊滅的な弾薬の爆燃(注:誘爆)はまだ見られていない。









シリア内戦ではT-72が最も注目を集めているが、依然として運用されているT-62とT-55戦車シリーズは、シリアの機甲部隊の大半を占め続けている。
実際、シリア軍の新しく設立された第5軍団は、最近になってロシアからT-62Mを受領し始めた
この最近のロシアからの機甲戦力の流入については、既に過去2年間でT-90A、T-90、T-72(1989年型)、T-72B、BMP-2、BMP-1(P)の供与が見られている。















演習中に、シリア軍兵士が守備位置で小火器の照準を合わせている(写真)。
内戦直前に大量の中国製ヘルメットとボディアーマーが中国から調達されたが、シリア軍はこの新しく支給された装備をすぐに使い果たした。
いくつかの部隊は倉庫に備蓄されていたものを見つけ次第、何でも再装備していたが、他の部隊はより装備に乏しかったり、またはスクーア・アル=サハラ(駐:政権側の民兵組織)のように自身の制服と装備自体が自己負担になったと思われるケースもあり、その結果、今日の戦場では豊富な種類の制服と装備が見られるようになった。







アレッポの下町を通り抜けるT-72M1(写真)。
2012年以来大激戦が繰り広げられたこの都市へのアサド政権の影響力は、かつてはもうあまり長くはないと思われていた。
包囲され、あらゆる側面から攻撃されたシリア軍は、最初は残った領域を強固にしようと試み、その後の攻勢は政権のために局面を変える重要な鍵となった。
あらゆる見込みに反して、アレッポはその4年後にシリア軍によって完全に奪還され、反体制派へ致命的な打撃を与えた。




ダマスカスにある無名戦士の墓で、戦死した兵士の碑である(写真)。
モニュメントのドームは宇宙を象徴し、その上のアーチは勝利を象徴している。
2つの節(クルアーン:169,170)がドームの両側に書かれている。

وَلَا تَحْسَبَنَّ الَّذِينَ قُتِلُوا فِي سَبِيلِ اللَّـهِ أَمْوَاتًا بَلْ أَحْيَاءٌ عِندَ رَبِّهِمْ يُرْزَقُونَ﴿١٦٩﴾ فَرِحِينَ بِمَا آتَاهُمُ اللَّـهُ مِن فَضْلِهِ وَيَسْتَبْشِرُونَ بِالَّذِينَ لَمْ يَلْحَقُوا بِهِم مِّنْ خَلْفِهِمْ أَلَّا خَوْفٌ عَلَيْهِمْ وَلَا هُمْ يَحْزَنُونَ ﴿١٧٠﴾ (آل عمران: 169، 170) - '
アッラーの御為に殺された人たちを決して死んだものと思ってはならないぞ。彼らは立派に神様のお傍で生きておる、何でも充分に戴いて。
あの人たちはアッラーが授けて下さったお恵みに感激し、またいまだ彼らのところまでは来ていないが、後からついて来ている人たちのためにも大いに喜んでおる。もうそういう人たちには何も恐ろしいことはないのだし、悲しむこともないのだから。(クルアーン:169,170)



 ※ この翻訳元の記事は、2017年2月28日に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。   

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