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2022年4月18日月曜日

蘇るAFV:タリバン軍が機甲戦力を復活させる(短編記事)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2001年のアメリカによる侵攻をうけた後、アフガニスタンにおける機甲戦は劇的に減少しました。

 過去の政権や軍閥は火力支援プラットフォームとしての使用で装甲戦闘車両用(AFV)に大きく依存していましたが、米国主導の有志連合軍は重装甲戦力が新しいアフガン国民軍(ANA)にとって全く役に立たないものと考えていたようです。

 その結果として、唯一残っていたANAの機甲部隊にM60A3戦車を再装備する計画については最終的に棚上げされたため、ANAは純真な献身によってのみ1個の戦車大隊を何とかして維持することができたのです。[1]

 BMPシリーズの歩兵戦闘車やZSU-23自走対空砲のような他のAFVはさらに幸運に恵まれず、2000年代半ばの至るところでますます多くの車両が退役に直面していました。

 それにもかかわらず、アメリカは約200台のM113装甲兵員輸送車(APC)をANAに供与しました。しかし、M113のIEDに対する脆弱性と貧相な武装は対反乱戦には不向きであったため、その大部分がすぐに国内各地にあるANAの基地で放置されてしまいました。[2]

 全国の遠隔地にある基地では、いくつかのT-55とT-62がトーチカとして活用されていました。これらの戦車の活用については、その多くは自力で動くことができなくなっているため、大抵の場合は全国的な規模で戦車を移動式のトーチカとして転用することに取り組んだというよりは現地の指揮官が主導して行われたようです。[3]

 戦車がまだ自走できた場合は単に基地の周囲を走り回る際のときに動くだけであって、作戦への投入で動くことはありませんでした。

 しかし、2021年11月中旬に公開された画像は、アフガニスタンの新たなイスラム首長国(タリバン政権)が再び大規模な機甲戦力を使用に転じる可能性を示唆しているように見えます。カリ・ファシフディン陸軍参謀長がカブール近郊の基地を視察した際に、少なくとも各1台ずつのT-62M、T-55、BMP-2を使用していると思われる部隊を訪問したのです。[4]

 さらに、この画像(ヘッダー画像)の後ろには2台のM1117装甲警備車(ASV)も見えます。ASVはタリバン軍が国内で急速に進撃している際に、膨大な数が無傷のまま彼らに鹵獲されています。

カブールでの軍事パレードに登場したBMP-2(ヘッダー画像と同一の車両)

 タリバンの指導下にある新しいアフガニスタン軍が、今でも全国各地の基地で依然として放置され続けているより多くの重火器を復活させようと試みるであろうことは考えられないことではありません。これには戦車から「BM-27」220mm多連装ロケット砲のみならず弾道ミサイルまでもが含まれています。[5] [6] [7]

 しかし、後者の場合は何年も屋外で(野ざらしで)保管されていたので再使用はできそうもなく、カブールの新政府はほぼ間違いなくこのような兵器を全く必要としていないと思われます。

特別協力: NatsecjeffLukas Muller(敬称略)

[1] Afghanistan’s tank battalion is melting away https://www.stripes.com/afghanistan-s-tank-battalion-is-melting-away-1.543030
[2] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
[3] Disaster At Hand: Documenting Afghan Military Equipment Losses Since June 2021 until August 14, 2021 https://www.oryxspioenkop.com/2021/06/disaster-at-hand-documenting-afghan.html
[4] https://twitter.com/Natsecjeff/status/1459921989225877506
[5] https://twitter.com/oryxspioenkop/status/1432401256086188032
[6] https://twitter.com/oryxspioenkop/status/1438829457528213510
[7] https://twitter.com/AlHadath/status/1438566027663593484

※  当記事は、2021年11月15日に本国版「Oryx」ブログに投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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目の前の大災難: 失われたアフガニスタンの軍用装備の記録 2021年6月~8月15日(一覧)



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ in collaboration with COIN と Jakub Janovsky(編訳:Tarao Goo)

※8月15日22時の時点でアフガニスタン政府軍・治安部隊の組織的抵抗が終了し、民主体制が事実上崩壊したため、オリジナルの記事(英語版)の更新が終了しました英語版の最終更新日は2021年8月15日午後9時55分。そのため、A-29などの鹵獲兵器については現時点で掲載する予定はありません。また、この記事の内容について現状とそぐわない内容がありますが、「崩壊」前の考察ということでご理解ください。
 英語版の更新が終了したことに伴い、この日本語版でもこの日をもって更新を終了とします(最終更新:2021年8月16日午後8時40分)
※必要に応じて更新される可能性はあります。

 物議を醸している米国のアフガニスタンからの撤退は、全国規模のタリバンの復活に直面しているカブールを奈落の底への瀬戸際に立たせています。国内の大部分で治安情勢が次第に悪化している中、タリバンが間もなくアフガニスタン全体を制圧する可能性という懸念が現実となりつつあり、長期的には現地の状況が2001年の米国侵攻以前に戻ってしまう可能性があります。

 米軍とそのNATO同盟国の撤退は一部の人々からは賞賛され、別の人々からは激しく批判されていますが、一見して全ての人が同意できることが1つあります。それは、タリバンを打倒するという20年間にわたる米国主導の作戦が大失敗だったということです。

 米軍やNATO軍が不在の中で、アフガニスタン政府がこれまで以上に国内の大部分を支配し続ける(バイデン政権からの無反応によって自信を鼓舞された)敵に対して、いつまでその立場を死守できるのかは現時点ではまだ分かりません。米軍による直航空支援、情報アセットや後方支援をすぐに得られないアフガニスタン軍が、タリバン軍を現在の支配地域に閉じ込めておくことは限りなく困難です。

 依然としてアフガニスタンの軍属である米国の請負業者が撤収する可能性は状況を悪化させるだけであり、退却して数週間以内にアフガニスタン空軍機の多くが運用不可能になる可能性があります。

 2011年のイラク撤退と同様に、米国は数百億ドルを投資したにもかかわらず、与えられた任務に対処する準備が不十分な衰弱した軍事組織をこの国にも残しました。過去20年間でアフガニスタン治安部隊に提供された膨大な量の装備を大げさに言うことことは難しく、HMMWV「ハンヴィー」だけでも約25,000台にも達します(注:供与された量があまりにも膨大なため、数を膨らまして適当な数を言っても間違いではない可能性があると言うこと)。それ自体は見事な数ですが、 HMMWVの簡易爆発装置(IED)に対する防御不足は、それらにはアフガニスタンでNATO軍が使用している耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)のような防御能力がほとんど無いことを意味しています。驚くべきことに、そのようなMRAPをアメリカ全土の警察で容易に利用できるようになった一方で、アフガニスタンの治安部隊にはそれ無しで任務を遂行しなければならない状況にあるのです。

 米軍の撤退後にアフガニスタンが直面する状況については、米国の近現代史の中では決して稀な出来事ではありません。1970年代に同盟国である南ベトナムを実質的に見捨てた後、2011年には麻痺したイラクを置き去りにし、今度はアフガニスタンから撤退...帰国祝賀会は今後数十年にもわたってアフガニスタンでの戦争の結果に苦しむ人々の悲観的な見通しによって汚されることになるでしょう。

 このような軍事介入を始める熱心さは(紛争の現実があまりにも不愉快なものになったときに)その後の国の運命に対する無関心の度合いと一致しているため、結果としてこのような介入による悲劇が繰り返されています。その一方で、現地の住民は何世代にもわたってアメリカの政治の気まぐれに望まぬ犠牲を負うことになります。皮肉にも、この犠牲はアメリカの納税者が軍需産業に何兆ドルも不本意ながら投資したことによって生じたものなのです。

 (今のところアフガン治安部隊には力不足である)カブール国際空港(IAP)の管理を誰がすることになるのかという合意がなされていないことは、米国がアフガニスタンから撤退する際の無計画さを大いに示しています。この事態を収拾できる可能性がある国の一つはトルコです。この国はは2015年からカブールIAPの運営を行っており、十分な後方支援と資金援助があれば将来的にも同空港の運営・保護することを申し出ています。カブールIAPとその周辺の安全を確保することは国内外での航空業務を維持するために不可欠です。もしそうでなければ外交使節団や開発機関は追い詰められた国を避けてしまうからです。

 トルコにとって、アフガニスタンへの関与を強めることは、S-400ミサイルの購入をめぐって課された米国の制裁措置が緩和か解除に結びつく可能性があります。NATOで唯一ムスリム国家で中東の加盟国でもあるトルコは、最終的に永続的なアフガンの平和を実現するため、全ての政治的当事者に合意をするよう働きかけるのに最も適した立場にあるかもしれません。トルコの支援はアフガニスタンをビジネスの場として開放し続けるために不可欠であると同時に、タリバンにカブール地区が簡単に手の届くものではないという強い警告を送ることになるでしょう。

 それを実行できる方法の一つとして、トルコの非常に効率的な無人機の使用がありますが、同時に彼らはそれを活用した全く新しい外交政策「バイラクタル外交」を形成しました。低い経済的・人道的なコストで政治的・軍事的な影響の最大化を追求した、小規模な介入を基本とする「バイラクタル外交」は、現代の紛争の特徴に比類なく適した新しいタイプの戦いを本質的に構成します。それを担う「バイラクタルTB2」無人機は比較的安価なものですが、バイラクタル外交は実際には国家の運命を決めたと言えるほど効果的でした:「バイラクタルTB2」がなければ、国際的に承認されたリビア政府(GNA)は2019年か2020年に全滅していた可能性が十分にあり得たからです(この文章が意味すること:仮にバイラクタル外交がリビアやナゴルノ・カラバフのように国家の運命を左右したとしても、この外交で使われるTB2は安価で発展性がある無人機であり、決して驚異的な武器ではありません)。

 アフガン政府を支えていた米国の軍事力の代わりを務めることは厳しい挑戦となるでしょうが、「バイラクタル外交」は少なくとも首都カブールとその周辺の安全を確保するために展開することが可能でしょう。

 

 2021年6月以降に破壊や捕獲されたアフガン国軍および国家警察の装備に関する詳細なリストは以下のとおりです。このリストは、追加の映像や画像が公開されるごとに随時更新されます。

 このリストでは、破壊や捕獲された車両や装備のうち、写真や映像による証拠が得られるものだけを掲載しています。
タリバンの戦闘員の大多数は高性能の携帯電話を持っておらず、その宣伝部門は装備の捕獲状況を写真や映像で公表することはありません。したがって、破壊された装備の量は間違いなくここに記録されている以上のものとなります。

 無傷で捕獲された全ての装備がその時点で稼働状態にあるわけではなく、多くのHMMWVやフォード・レンジャーはほかの車両を稼働させ続けるためのスペアパーツの供給源として使用されています。共食い整備で使用されている度合いが大きく、大規模なオーバーホールのみによって運用状態に復帰できる捕獲車両については、このリストでは「損傷・捕獲」と分類しています。そのため、タリバンによって捕獲された車両が、そのまま彼らの同規模の作戦車両群とはなりません(注:捕獲車両数と今後タリバンが運用するであろう車両数は一致しないということ)。

 また、小火器、弾薬、トレーラー、民生車両や遺棄されたトラックはこのリストには含まれていません。
全ての項目は日付順に並べられています。

 (表示されている番号をクリックすると破壊・捕獲された装備の画像が表示されます)



アフガニスタン国軍 / アフガニスタン国家警察


戦車 (12, このうち捕獲: 12)


装甲戦闘車両 (60, このうち破壊: 9, 捕獲: 51)


牽引砲・迫撃砲 (61, このうち捕獲: 61)


対空砲 (8, このうち捕獲: 8)


航空機・ヘリコプター (23 このうち破壊: 7, 捕獲:16)


トラック・各種車両・ジープ (2086, このうち破壊: 106, 捕獲: 1980)

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このリストを作成するために次の方のツイートを参考にさせていただきました:Farooq Bhai, Higurashi, Calibre Obscura と Dan.


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